融資を成功に導く効果的な依頼方法とは
金融機関が納得する「伝え方」と「準備」のすべて
中小企業が金融機関に融資を申し込む際、「いかに自社に資金が必要で、どう返済していけるか」を的確に伝えられるかどうかが、融資成功の大きな分かれ道になります。しかし実際には、「資金繰りが厳しい」「設備投資を考えている」といった曖昧な依頼では、審査をスムーズに通過することは難しいのが現実です。本稿では、金融機関の視点に立ちながら、財務担当者が実務として取り組むべき融資申込時の説明方法と、そのポイントについて整理していきます。
融資を依頼する際の3つの基本原則
融資を申し込む際に金融機関から必ず確認されるのが、次の3点です。
- いくら必要なのか
- 何に使うのか
- どうやって返済するのか
この3点が明確に説明されていなければ、どれほど業績が良好な企業であっても、金融機関は融資判断に困ってしまいます。
裏を返せば、この3点をロジカルに整理し、資料や数値をもとに説明できれば、審査は格段にスムーズになります。
「いくら必要なのか」を説明するには

まず最初に問われるのが、資金の必要額です。
例えば「2,000万円必要」と申請したとしても、その金額の根拠が示されていなければ、金融機関にとっては過剰融資の懸念が生じます。
このとき有効なのが、月次の資金繰り表です。
たとえば「売掛金の入金が3カ月後にずれ込むため、仕入や外注費とのタイムラグで月次500万円の資金不足が出る。これが3カ月続くため、合計1,500万円が必要」というように、時系列と金額の裏付けを伴った説明が求められます。
「何に使うのか」を具体的に伝える
次に説明すべきは、資金の使途です。
運転資金・仕入・人件費・設備投資・借入金の返済など、資金の使い道はさまざまですが、ここでも大切なのは「具体性」と「現実味」です。
たとえば、「新工場建設に向けた設計費用」や「新商品に向けた外注製作費」など、資金がどこに・いつ流れるのかを見える形で示す必要があります。
「なんとなく必要だから」という表現では、金融機関はリスクを測ることができません。
「どう返すか」は最大の審査ポイント
そして3つ目は、返済原資の説明です。
金融機関が最も重視するのが、「借りたお金を、どのように・どれくらいの期間で返せるか」という点です。
たとえば、「月商が2,000万円で、今後も受注残が続くため3カ月後以降に回収が増える。そのタイミングに合わせて返済を始める計画である」といったように、収支の時系列と売上見込みに基づく根拠ある返済計画を提示する必要があります。
返済開始時期や期間、元利均等返済か一括かなど、形式も合わせて伝えることで、金融機関にとっての安心材料となります。
「良い依頼」「悪い依頼」の差とは?
ここで、実際の現場で見られる例を紹介します。
最近、資金繰りが厳しくて…
なんとなく2,000万円くらいあれば乗り切れると思う
残念ながら、こうした依頼では、金額も使途も返済計画も曖昧であり金融機関としてはリスクが読めません。
一方で良い例は、

仕入サイトの変更により、3カ月間で資金ギャップが2,000万円発生する見込み。これに対応するため、返済は売上入金が始まる4カ月目から開始し、月次50万円ずつ返済する計画です
このように数値・背景・返済スケジュールが揃っている依頼であれば、金融機関も判断しやすくなります。
業種別の注意点
業種によっても、融資判断のしやすさには差があります。
たとえば、建設業や製造業は、キャッシュフローの予測が立てやすいため、金融機関の理解を得やすい傾向にあります。一方、ITサービス業やアプリ開発などは、実績が出るまでに時間がかかるため、KPIやマイルストーンを含めた丁寧な説明が必要です。
金融機関は事業の成長性よりも、返済可能性=現金化の見込みを重視するため、業種ごとの傾向を踏まえて資料を準備することが大切です。
金融機関との関係を築く
融資は一度きりのイベントではなく、金融機関との長期的な関係づくりの一環です。月次の試算表や資金繰り表を定期的に共有し、必要なタイミングでスムーズに書類を提出できる体制を整えておくことが、信頼を得る土台となります。
また、金融機関にとって説明しやすい資料をつくる努力を重ねておくことも、将来の融資条件改善につながります。
融資は単なる資金調達手段ではなく、企業の将来を支える戦略の一部です。
「いくら必要なのか」「何に使うのか」「どう返すのか」の3点を明確にし、数字と資料で伝える力を持つことが、財務担当者に求められる基本スキルです。
信頼を得る財務担当者になるために、日頃から数字を整え、丁寧に説明する姿勢を持ち続けることが、企業の持続的な成長と、スムーズな資金調達につながっていくのです。
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