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各金融機関の利用方法

各金融機関の利用方法

中小企業の成長段階や経営状態に応じて、どの金融機関をどのように活用するかを知っておくことは重要です。以下に、創業期から2期、そして3年目以降のステージ別に、政府系金融機関・信用金庫・商工中金・地方銀行・都市銀行それぞれの使い方をご説明します。

目次

(1) 創業時(開業直後・営業実績がほとんどない段階)

創業時には、実績・資産・信用が十分でないことがほとんどです。この時期に最も利用しやすい金融機関と制度は以下の通りです。

  • 政府系金融機関(特に日本政策金融公庫)が最も有力です。新規開業・スタートアップ支援資金など、無担保・無保証人制度のある融資があります。創業前または開業後税務申告2期を終えていない場合はこれらを活用します。
  • 制度融資を提供している自治体(地方自治体)の制度を調べてみることも有効です。自治体によっては利子補給や信用保証料の補助がある制度があります。
  • 信用金庫・信用組合は地域密着で、創業者に対して比較的柔軟な審査をすることがあります。営業実績が薄くても、事業計画書がしっかりしていれば相談できることがあります。

この段階で注意すべき点:

申込から実行までの期間を見込んで早めに動くこと。創業融資や制度融資では手続き・審査に時間がかかることがあります。

創業に必要な資金の範囲を明確にし、自己資金(創業資金の一部)を確保できるかを確認する。新創業融資制度などには自己資金要件が設けられていることがあります。

事業計画書・資金繰り表をきちんと作成すること。何にいつどれだけ使うかを示すことが審査通過に大きく影響します。

(2) 設立から2年目まで

創業後から2期目の決算を迎えるまでの間は、まだ信用情報・実績が十分でないケースが多く、金融機関との関係構築と信用格付け(財務内容・経営内容の審査)が極めて重要になります。この期間の使い方としては以下が考えられます。

  • 制度融資および政府系金融機関の無担保・無保証融資を中心に利用する。実績が乏しい会社でも融資を引きやすい制度が整っているためです。
  • 信用保証協会を活用した保証付融資を利用することで、民間金融機関からのプロパー融資を取れる可能性が高まります。信用保証協会の保証付きであれば金融機関側のリスクが下がるため、審査が通りやすくなるケースがあります。
  • 信用金庫・信用組合との取引を増やし、地域での信用力を積む。会員出資・日頃の取引を重ねることで担当者との関係構築が可能になります。
  • 財務諸表・資金繰り表を毎期しっかり整備し、損益・貸借・キャッシュフローの状況を明らかにしておくこと。これが2期目までに順調であれば、プロパー融資への移行が見えてきます。

(3) 3年目以降

3年目以降になると、業績・実績・信用情報が一定見えてくるため、金融機関の選び方と交渉の余地が広がります。

  • 地方銀行や第二地方銀行との関係を深めることが有効です。中小企業で年商が1〜10億円規模であれば、地方銀行とのプロパー融資を中心とする取引が期待できるようになります。
  • 信用金庫・信用組合も選択肢として依然有効。審査の柔軟性があるため、小規模案件や地域貢献性のある事業では積極的な支持を得やすいです。
  • メガバンク(都市銀行)は、大口資金・設備投資・長期借入などの案件での候補となります。この際は、既存の実績や決算内容が十分であること、資本金・売上規模が一定以上あることなどが条件となることが多いです。
  • 担当者との関係構築が鍵です。銀行が取引先として信頼できると判断すれば、融資条件(利率・返済期間など)が交渉可能となるケースがあります。

(4) 各金融機関の具体的利用戦略

以下、金融機関ごとにより具体的なアプローチを整理します。

金融機関種別強み利用のコツ
日本政策金融公庫創業・小規模向けに融資制度が整っており、無担保・無保証人制度も利用可。利率・返済期間の条件も比較的緩やか。創業計画書を丁寧に作る。自治体制度との併用を検討。自己資金の証明を準備する。審査期間を見込んで早めに申請。
信用金庫/信用組合地域密着、親しみやすい担当者が多く、小規模・創業期の相談に乗ってもらいやすい。地域貢献性や地元取引を重視する。会員(組合員)となることも視野に。普段から預金や取引をしておく。事業内容を地域特性に沿わせる。
商工中金政府と民間の共同出資で、政策性を持ちつつ、中小企業に対して比較的低金利の融資を提供。危機対応制度や特別融資枠があることがある。商工中金の窓口で政策枠がないかを確認。長期・設備投資案件で選択肢として検討する。
地方銀行 / 第二地方銀行地場企業・中小企業の取引先を多く持ち、土地勘・地域のビジネス環境を理解してくれる。融資スピードが信用金庫ほどではないが、商慣習が近いため交渉しやすい。対応する支店や担当者を探す。過去実績や信用度を示せる資料を準備。自治体制度融資とセットで使う可能性を探る。
都市銀行(メガバンク)大口・国際案件・設備投資・与信力が高い案件に対して大きな融資を引き出せる可能性あり。多数の金融サービスを統合できる。財務内容を強化し、借入後の返済計画を明確に。複雑なスキームを提案できる場合は専門家(CFO・財務アドバイザー)を活用。信用保証や担保の可能性も検討する。

(5) よくある質問・注意点

  • 保証付き融資 vs プロパー融資:保証付き融資は信用保証協会が間に入ることで金融機関の審査ハードルが下がりますが、保証料がかかり、将来的にはプロパー融資へ切り替えることが望まれます。
  • 自己資金の有無:創業融資制度などでは一定の自己資金要件があることがあります。ゼロでも可能な例もあるものの、自己資金があると審査において有利になります。
  • 時間の余裕を持つこと:制度融資・創業融資は申込から実行まで数週間〜数ヶ月かかることがあります。余裕を持って準備を進めることが重要です。
  • 地域制度の違い:自治体が提供する制度融資や利子補給制度は地域ごとに内容・条件が大きく異なります。地元の商工会や中小企業支援センターで情報を確認してください。
  • 資金使途・返済計画の整合性:金融機関はお金の使い道と返済の見通しがきちんとしているかを重視します。設備資金なら償却年数に合わせた返済、運転資金ならキャッシュフローを意識した設計が求められます。
金融機関の利用方法についてのポイント

創業時は日本政策金融公庫などの公的制度を活用し、設立後は保証付き融資を経て、財務内容が整えばプロパー融資に移行するのが基本的な流れです。3年目以降は、企業規模に応じて信用金庫・地方銀行・メガバンクを使い分け、信頼関係と実績に基づいた取引を築くことが、安定した資金調達の鍵となります。

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