光熱費
光熱費を制する者が利益を制す
「売上を上げる」のはもちろん重要ですが、それと同じくらい「支出を抑え、利益率・キャッシュフローを改善する」ことが経営の安定と成長に直結します。特に光熱費(電気料金・ガス料金)は毎月必ずかかる固定コストの一部で、契約内容・機器の効率性・使用方法を工夫することで大きく削減できる領域です。
経営指標で見ると、光熱費削減は以下の点で影響します:
- 営業利益率の改善
- キャッシュフローの増加(フリーキャッシュフローの向上)
- コスト比率(売上に対する固定費比率)の改善
中小企業にとって、光熱費削減は比較的実行しやすく、効果も見えやすい施策です。本記事では、具体策・注意点・成功事例も含めて、「どこから始めればいいか?」をわかりやすく解説します。
目次
光熱費削減の具体的施策
以下、電気・ガスそれぞれおよび共通でできる削減策を段階的に紹介します。
電気料金削減の施策
電力契約の見直し/電力会社の切り替え
- 法人向けプランの見直しを定期的に行う。特に、契約電力や料金メニュー(時間帯別料金など)を最適化する。
- 電力会社の自由化を活用して、複数社の料金プランを比較し、安いものを選ぶ。電気チョイス
デマンド値の管理/ピークカット対策
- 過去一年間のデマンド値(最大使用電力)を見て、契約電力の見直しを行う。契約電力を無駄に高く契約していないか確認。
- ピーク時の使用を抑制するルール設定や設備の順次起動、シフト運用などでピークを平準化。
- デマンド監視システムの導入も効果的(初期投資ありだが回収期間が比較的短いケース多し)。
設備の省エネ化・運用改善
- 照明を LED 電球・照明器具に変更する。照明は設備投資としても少額で始めやすく、消費電力削減が大きい。
- 空調設備の効率化(フィルター清掃・温度設定の見直し・稼働時間の制限など)。
- 太陽光発電+蓄電池を導入して自家消費率を上げる。これにより高圧契約などで電力単価削減ができるケースあり。補助金制度も有効。
見える化・意識改革
- 電気使用量・電気代を部署別/時間帯別に分けて見える化する。掲示・レポートで全員共有。従業員の省電意識を引き出す。
- ガス料金についても同様に使用量を可視化・プラン見直しを含めて見直す。給湯・暖房などで無駄がないか確認。
補助金・公的支援の活用
- 電気・ガス料金支援制度を政府が実施しているケースあり。中小企業は対象となることが多いため、最新の情報を確認。
- 省エネ機器導入には自治体補助金・税制優遇制度(特別償却・税額控除など)が使える場合がある。
ガス料金削減の施策
使用機器の見直しと効率運用
- ボイラーや給湯器の効率性能を確認し、老朽機器は高効率タイプに更新する。
- ガス機器の保温(断熱管・保温材の設置)、リーク(漏れ)の防止など、運用部分の改善。
- 使用しない時は電源オフ・待機状態のガス燃焼を減らす。
プランや契約条件の見直し
- ガス会社の料金プランを比較し、提供条件・基本料金+従量料金の構成を見て最適なプランへ乗り換える。
- 複数の供給会社が利用可能な地域では競合を活用する。料金制度変更に伴う影響を把握しておく。
運用の工夫による削減
- ガス使用時間を限定する(例、深夜・早朝の暖房時間を絞る)
- 熱を有効活用する循環方式の導入や、保温材などを使ってロスを減らす。
- 給湯の温度設定見直し・給湯器の運転スケジュールの最適化など。
従業員教育・意識改革
- ガス使用ルールを明文化し、従業員に周知。「ガスを使っていないときのチェック」「こまめな消火・湯切れ」など、小さな行動が積み重なる。 使用量をグラフ・数値で可視化し、節約の成果を見える形にすることがモチベーション維持につながる。
光熱費削減が経営指標に与える影響
ここまでの削減施策を導入すると、中小企業にとってどのような経営指標の改善が期待できるか、モデルを用いて見ていきましょう。
| 削減施策 | 削減率の目安 | 売上:1,000万円/月の会社での月間コスト改善額 | 指標への影響 |
|---|---|---|---|
| 契約電力の見直し・電力会社の切り替え(10%削減) | 約10% | 電気代を仮に50万円 → 45万円:月5万円の削減 | 営業利益率が 0.5ポイント向上 |
| LED化・空調効率改善(機器更新あり) | 20〜40%削減可能 | 電気代50万円 → 30〜40万円:月10〜20万円削減 | キャッシュフロー改善、設備投資の回収期間でROI向上 |
| ガス機器の効率運用と教育見直し(ガス代10%削減) | 約10% | ガス代20万円 → 18万円:月2万円削減 | 固定費比率低減、利益率向上 |
成功事例
リスク管理
光熱費削減の施策を進める際には、以下の点に注意する必要があります:
- 初期投資との回収期間:設備更新(太陽光・LED・空調等)は初期コストがかかるので、回収期間を必ず見積もる。
- 補助金・助成金要件の確認:地域・業種・設備仕様で補助対象が限定されることが多い。申請期限にも注意。
- 運用の品質維持:光の明るさ・快適温度・お湯の温度など、サービス品質や社員満足を下げない範囲での削減を。
- 契約変更に伴う違約金や手続きコストの把握:電力会社切替や契約見直し時に違約金が発生する場合もあるので契約書を確認。
今すぐできる見直しチェックステップ
以下のチェックリストを使って、光熱費の見直しを始めてみてください。
今すぐできる光熱費削減アクションリスト
- 直近12か月の電気・ガス請求書を集めて月ごとの使用量・基本料金・従量料金を把握する。
- 電力契約・ガス契約プランを閲覧し、契約電力・料金体系・契約種別を整理する。
- 運用改善できる箇所を洗い出す(LED化・空調改善・節電ルールなど)。
- 見積もりが可能な光熱費最適化サービス(ASP案件など)を比較検討する。
- 補助金・地方自治体の支援制度を調べ、申請可能なものを押さえる。
- 削減効果を売上・利益率・キャッシュフローなどの経営指標で試算し、「削減後 vs 削減前」のモデルを作る。
ポイント
光熱費(電気・ガス)は“毎日かかる固定費”でありながら、見直しによって利益率・キャッシュフロー・企業価値を確実に引き上げられる項目です。契約内容・設備・使用ルールを段階的に改善し、必要なら先進的な設備導入やサービス活用を行うことで、削減効果は大きくなります。中小企業だからこそ、早めに始めて“無駄な支出”を減らし、余力を経営改善・成長投資に回しましょう。



