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ファクタリング

中小企業の資金繰りを立て直す「ファクタリング」

中小企業にとって資金調達の選択肢

売掛金の早期資金化は、黒字でも資金が尽きる“利益と資金のタイムラグ”を埋める王道の打ち手です。本記事では、ファクタリングの仕組み、2社間・3社間の違い、手数料と掛目、必要書類、会計処理、違法スキームの見分け方、実務での失敗防止ポイントまでを体系化してご紹介しています。加えて、複数社相見積りを前提にした最適事業者の選び方もご紹介します。金融機関融資が間に合わない/難しい場合の“時間を買う”選択肢として、経営の安全余裕を確保するための実務書としてご活用ください。

目次

ファクタリングの基本と目的

売掛金(得意先への請求)をファクタリング会社に売却し、一定の手数料を差し引いた金額を“先に受け取る”取引です。売上が立っても入金が1〜2か月先になる業態では資金が枯渇しがちで、在庫や仕入・人件費などの先払いが続くと資金ギャップが急拡大します。そこで売掛金を前倒しで現金化し、運転資金の谷を埋めるのがファクタリングの主目的です。
例:売掛金1,000万円、手数料率10%なら手数料100万円、入金900万円。入金前倒しにより支払遅延や機会損失を防ぎ、キャッシュフローを平準化できます。資金繰り改善以外の目的(投機的運用や恒常赤字の補填など)には基本的に向きません

2社間と3社間の違い

  • 2社間:貴社とファクタリング会社の2者で契約。得意先への通知不要で使いやすい一方、リスクが高い分、手数料率は相対的に高め(相場目安:10〜20%)。
  • 3社間:貴社・ファクタリング会社・得意先の3者で契約。承諾や通知が前提のため開示ハードルはあるが、手数料は少なめ(相場目安:1〜5%)。医療・介護の診療報酬・介護報酬など公的機関が相手の売掛では3社間が組みやすく、制度・実務上も親和性が高いのが一般的です。

典型ユースケース

  • 決算端境期や繁忙期前の仕入・在庫の前倒し手当
  • 新規大型受注の立ち上がり期(仕掛・外注・増員コストが先行)
  • 回収サイトが長い得意先の比率が高く、金融機関の短期枠だけでは不足
  • 診療・介護報酬など公的請求の入金サイクルが固定されている領域(3社間)

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メリットと限界(費用対効果の見極め)

メリットは“時間の短縮”と“資金ショートの回避”です。融資が決まるまでの待機時間を要せず、売掛の信用力を基礎に短期で現金化できます。一方、費用(手数料+各種実費)と掛目(額面に対する買取対象比率)で実入金は目減りします。資金ギャップの“埋めるべき谷の深さ・期間”と“費用”の天秤で、投資回収や機会損失の回避効果が上回るかを定量評価することが前提です。
医療・介護等の3社間は手数料が低くなりやすく、一般BtoBでは2社間の使い勝手と費用のバランスを都度検討します。

手数料・掛目・総費用の目安

手数料は「率」だけでなく、登記費用(必要時)、収入印紙、事務手数料、送金費用などの付随費用を含めた“総費用”で判断します。
・2社間:10〜20%目安(案件・債権の質・利用回数で上下)
・3社間:1〜5%目安(承諾・通知とセットで低率化しやすい)
掛目は額面満額ではなく一定控除を伴うため、必要資金逆算時は「入金予定=額面×掛目−総費用」で見積もるのが安全です。

必要書類と審査観点(通しやすくするコツ)

提出例:本人確認書類、決算書(ない場合は試算表)、請求書、通帳コピー(入出金実績がわかるもの)、登記事項証明書、印鑑証明、納税証明、主要取引先の基礎情報 等。ポイントは「売掛先の実在性・継続性・支払実績」です。個人への売掛は対象外が基本。Webサイトや店舗などの実在性、過去入金履歴が客観資料で確認できると通過率は上がります。審査の重心は“貴社”より“売掛先”の信用力に置かれるのが通例で、赤字・債務超過・税滞納・創業直後でも通過余地があるのはこのためです。

契約フローの実務

申し込み→ヒアリング→仮見積り→必要書類提出→審査→条件提示→契約(対面または非対面)→入金→(2社間は)売掛先入金後に清算。契約書は項目が多く、当日すべてを精査し切れないことも。事前に「総費用」「掛目」「遅延時の取り扱い」「二重譲渡禁止」「債権譲渡登記・通知の要否」「反社条項」「手数料変動条件」を確認・議事録化しておくと後トラブルを避けやすいです。第三者対抗要件を確保する目的で債権譲渡登記/確定日付通知を用いる実務もあります。

会計・税務(日本基準の実務要点)

日本基準の2社間(償還請求あり型)の多くは実質借入の性格が強く、借入計上→入金時相殺の処理を採るケース、償還請求なしの真正売却型では売上債権売却損(または売掛債権売却損)で費用処理するケースが一般的です。勘定科目名は会計方針により揺れ幅があり、科目名にこだわるよりも実質に即して継続処理することが重要です。なお、ファクタリング手数料は消費税の課税対象外(非課税)として扱われる実務が多数派です。IFRSでは derecognition 等の要件が日本基準と異なるため留意。詳細は顧問税理士・会計士の助言に従ってください。

リスクと違法スキームへの注意

金融庁は「偽装ファクタリング(実質高利貸付)」や「給与ファクタリング」への注意喚起を継続的に行っています。手数料の名目で実質年利が極端に高くなる、割賦・分割返済スキームで貸金業法に抵触する疑義がある、反社・悪質回収などの事案には近づかないこと。公式注意喚起・行政処分履歴の確認、登記・所在地・役員実名の照合、契約条項の法務確認を徹底してください。

不正・横領は即アウト

2社間で売掛先から入金があったのにファクタ会社への支払いを滞らせる、架空請求書での申込み、二重譲渡などは横領・詐欺のリスク。契約時に差押え回避目的の債権譲渡通知書に事前署名していると、遅延や不正時に得意先へ内容証明で通知され、信用棄損・取引停止に直結します。社内統制(請求発行・入金消込・支払承認の職務分掌)を整え、事故の芽を潰してください。

業界別の実務ポイント

  • 製造/卸:仕入と在庫が先行しやすい。受注急増期は回収サイト延伸や前受金の交渉も併用。
  • 建設:出来高請求・検収条件の差異に注意。出来高証憑の整備で掛目改善の余地。
  • IT/BPO:検収承認が回収起点。契約書の検収条項を標準化し、立証力のある検収記録を残す。
  • 医療/介護:診療報酬・介護報酬の3社間が主流。事務局フローは煩雑でも低率を享受しやすい。

成功させるための“7つの型”

  • 相見積りの徹底:同じ売掛でも会社ごとに評価・費用が異なるため、最低3社は同条件で同時比較。
  • 使途の明確化:いつ・いくらの資金谷を埋め、どのキャッシュで返すか(次回回収や融資実行)を事前定義。
  • 掛目を上げる資料整備:請求・検収・納品・発注・契約・入金履歴を時系列で。電子帳簿保存法対応も加点。
  • 売掛先集中の回避:過度集中は掛目・条件に悪影響。分散と信用力の高い先の比重アップを。
  • 反復利用で条件改善:一定のトラックレコード後に手数料率・限度額が改善される余地。
  • 代替案と組み合わせ:当座貸越、短期コロがし、与信枠拡大、在庫回転の改善、支払サイト交渉も並走。
  • コンプライアンス:偽装や給与ファクタリングを排除。行政の注意喚起を定期モニタリング。

よくあるQ&A(実務の勘所)

Q. 個人事業主でも使えるか?
A. 法人向け売掛であれば申込可能な事業者が多数。決算書がなくても、通帳実績・請求・検収・契約・入金履歴で補完。

Q. 即日や土日対応は?
A. 会社により可否が分かれます。即日審査・当日入金・土日可・小口可(30万円〜)などの条件は事業者差が大きいため、要比較。

Q. 会計処理はどうする?
A. 実質に応じて(償還請求の有無等)処理。費用計上(売上債権売却損)または借入計上→相殺など、方針を定め継続処理。

Q. 法務の注意点は?
A. 二重譲渡禁止、反社・遅延時条項、第三者対抗要件の確保(登記・確定日付通知)を弁護士・司法書士と事前確認。

注意喚起(必読)

金融庁は、ファクタリングを装った高利貸付や、個人に対する「給与ファクタリング」等の違法・不適切サービスに繰り返し注意喚起を発出しています。実質金利が極端に高い、債務の分割返済スキームで貸金業法に抵触する疑い、契約の実質が“売買ではなく貸付”と評価されうるものは避けてください。公式リリース・行政処分履歴・業界団体の情報を必ず確認し、疑義があれば利用しないのが鉄則です。

比較・選定ステップ

STEP
目的と必要資金

入金ズレの幅(月次CF表で可視化)と、埋めるべき金額(額面ではなく純入金)を定義

STEP
候補抽出

2社間・3社間、即日可、医療特化、小口可、土日可、実店舗有、透明な手数料開示 等でリスト化

STEP
同条件見積

同一売掛先・同一額面・同一スケジュールで3〜5社に同時打診

STEP
条件比較

総費用・掛目・入金スピード・契約条項(遅延・違約)・登記要否・反社チェック

STEP
運用設計

返済・回転の計画(次の回収・融資実行・前受金などの出口)

STEP
利用後レビュー

実入金とコストをKPI化し、融資・手形サイト短縮・在庫回転改善に橋渡し

ポイント

ファクタリングは「高いから使わない」か「困ったら使う」の二択ではありません。資金ショートの回避・機会損失の阻止・仕入単価の改善・回転率の向上など、費用を上回る便益がある場面では合理的な選択です。一方で、偽装スキームや不当条項、杜撰な相手先選びは経営リスクを増幅します。数値で“使う理由”を説明できるように準備し、比較・契約・記録・会計の4点をきちんと回す――この基本動作が、資金繰りの地力を底上げします。

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