サブスクリプション費用を最適化する方法
サブスク費用が中小企業の固定費に与えるインパクト
クラウドシステム、業務支援（BPO／アウトソーシング）などのサブスクリプション契約が、現代の中小企業経営において「当たり前」のコストになってきています。会計ソフト、営業支援ツール、勤怠管理、チャットツール等、多くの業務がクラウドで行われ、月額または年額での支払いが定期的に発生します。
サブスク費用は、使い始めは少額でも、数ヶ月・数年経つと総額が大きくなり、また使い方・契約内容が変化するのに契約をそのままにしているケースが非常に多いため、無駄の温床になりやすい固定費です。
本記事では、「どの契約を見直すべきか」「見直し手順」「実例」「注意点」を含めて解説します。サブスクをコントロールできれば、毎月の余力が増し、成長投資や安定経営への道が開けます。
目次
サブスクリプション費用の種類と見直し余地
まずは、どのようなサブスクが中小企業にかかっているかを整理し、無駄になりやすい契約の特徴を明らかにします。
サブスク契約の主な種類
| カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 業務系クラウドツール | 会計ソフト、勤怠管理、CRM、SFA、チャット／コミュニケーションツール |
| プロダクティビティ・ライセンス | Office 365／Google Workspace／グラフィックツール／動画編集ソフト等 |
| BPO・業務支援サービス | 経理財務業務、給与計算、総務、労務手続き、問い合わせ対応、システム保守など |
| インフラ・クラウドホスティング | サーバー・DBホスティング・クラウドストレージ等 |
| マーケティング系サブスク | メール配信サービス、広告管理ツール、SNSスケジューラー等 |
無駄になりやすい契約の特徴
- 利用頻度が低い／使っていないアカウントが残っている
- 契約プランが過剰（容量・機能・ユーザー数）
- 更新時期に価格交渉をせずに自動更新されている
- 年払いと月払いの切り替えで無駄がある
- オプションやアドオン機能が不要なのに追加している
「すべての契約をリスト化し、利用頻度の低いサブスクを削除」「高額なソフトウェアライセンスを更新前に交渉する」ことの効果や、GMOあおぞらネット銀行の法人ページでも、「不要なサブスクリプション」の見直しを固定費削減策として挙げています。
見直しのステップと経営指標への波及効果
STEP
現状把握とデータの可視化
- 契約一覧の作成
- 全サブスクを洗い出し、サービス名・用途・月額／年額・ユーザー数・更新月・自動更新の有無・過去３～６か月の利用実績をまとめる。
- 利用状況の分析
- 使われていない機能やユーザーが多くても使っていないアカウントを特定する。たとえば、月額10,000円払っていて、ユーザーの5分の1しか使っていないなど。
- コスト構成要素の分解
- 月額固定費＋従量課金＋オプション費用＋契約更新料・違約金等を可視化。隠れコストがあるか探す。（契約時の見落としや仕様変更時の追加費用など）
STEP
交渉・代替・プラン見直し
- プランのダウングレード／ユーザー数削減
- 年間支払い割引など定期契約を活用（年払いの方が月払いより割安になるケースあり）
- 自動更新の解除権利・更新時期の交渉
- 無料枠／フリーミアムツールへの切り替え検討
- 他社サービス・オープンソース／国産の安価なものへの乗り換え
STEP
BPO活用の検討
- 業務量の一定部分を BPO 業者に委託することで、人件費・管理コストを削減できる可能性あり。調査によると、中小企業で BPO を導入している企業はコスト削減を実感するケースが一定数あります。
- ただし、「BPO の導入コスト」「品質」「コミュニケーションコスト」などの初期コスト・隠れコストを考慮する必要があります。Abeam の記事では、BPO が単純なコスト削減方法としては限界があり、導入設計・運用設計が重要であると指摘されています。
STEP
経営指標モデルによる効果予測
| モデル条件 | 月額サブスク合計 | 削減率 | 削減額/月 | 年間削減額 | 指標への影響 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小規模（従業員10名）オフィス型 | 20万円 | 20%削減 | 4万円 | 48万円 | 営業利益率 +0.4pp、FCF改善、再投資余力増大 |
| 中小（従業員50名） | 100万円 | 15%削減 | 15万円 | 180万円 | ROA / ROE 向上、借入返済余力・信用評価の改善 |
成功事例
注意点・リスク
- サービス品質や対応速度が低下しないか：ダウングレードやプラン削減で不満が出ることもあるので、使用者の要望をきちんと把握すること。
- 契約条項・解約ペナルティ・通知期間などの確認：自動更新などで意外なコストが発生する可能性あり。
- セキュリティ・データ保護要件：クラウドシステム・BPO を使う際にはデータの取扱いやセキュリティが守られているかを確認。
- 隠れコストの把握：従量課金・追加ユーザー料金・オプション料金などが本来の見積もり外でかかることがある。
ポイント
サブスク費用は「小さな支出」が多いため見落とされやすいですが、積み重なると固定費の大きな割合を占めてしまいます。契約の見直し・プラン調整・BPO導入・隠れコストの洗い出しを通じて、利益率・キャッシュフロー・ROA・ROEといった指標を改善できる余力を確保することができます。
中小企業だからこそ、早めに取り組み、小さな無駄を削ぎ落として経営の基盤を強くすることが重要です。今すぐ自社のサブスク契約を一覧化して、改善アクションを一つずつ始めていきましょう。
